会長メッセージ

日本取締役協会 会長 宮内義彦

日本取締役協会
会長 宮内義彦

コーポレートガバナンスの現状

本年度は平成から令和へと元号が変わり、新しい時代への期待が高まっています。その中で、平成の30年を振り返りますと、社会主義国家の消滅とそれに伴うグローバル市場の出現、中国や新興国の台頭、通信に代表されるIT技術の想像を超えた進歩。日本の成長を牽引してきた産業の優位性の低下などが印象的な事柄として思い起こされます。企業経営においても、右肩上がりの経済発展を背景に日本的経営といわれたものの優位性が失われていった様に見えます。新しい令和はどんな時代となるのでしょうか。これからは全体でそれなりに成長した時代から、各社の創意工夫により優劣が分かれる市場経済の厳しさが鮮明になってくるのかもしれません。

企業経営の新しいうねりのひとつに、我々日本取締役協会の動きがあります。それはコーポレートガバナンスを理解し企業の活性化を促そうとする試みであり、徐々にではありますが歩みはじめてきております。同じく関係機関の動きとしては具体的に会社法の改正、スチュワードシップコード、コーポレートガバナンスコードの施行などがあります。

そうした動きに伴い日本の企業は徐々にコーポレートガバナンスの形式を整え、社外取締役の導入も進み、900社近くが監査等委員会会社へ移行しました。また欧米企業に比べ著しく劣っていたROEなどの経営指標にも意識が行くようになり、十分ではありませんが改善の兆しもみられるようになりました。

しかし未だ多くの企業は複数の社外取締役を入れ、これでコードが求めるコーポレートガバナンス改革の基準をクリアーしたと安心しているようにも見受けられます。残念ながら意識を高くもって、コーポレートガバナンスをテコにして経営改善をはかり業績に反映しているのは、一部の先端企業にとどまっています。多くの企業はコーポレートガバナンスとは要求される形式をとりあえず整えることで事足りるといった意識で止まっているのではないでしょうか。世界の投資家からは、企業の社外取締役の更なる増員、取締役会の監督機能の充実やパフォーマンス、将来の成長性、各種報告書の整備の必要性、メッセージなど多くの部分での強化を指摘されています。

協会活動

日本取締役協会は、会合等を通じてコーポレートガバナンスの目的や投資家との対話、取締役会、CEO、独立取締役、内部統制などについて多くの議論を重ねて参りました。そのひとつとして、コーポレートガバナンスを上手く使い、良いパフォーマンスをあげている企業を後押しする表彰制度を創設し、ガバナンス・オブ・ザイヤーとして優良企業を顕彰して今回は4年目を迎えました。その選定を通じて、日本にはレベルの高い優良企業が既に多く存在し、独自にコーポレートガバナンスを進展させていることに気づかされ、大変頼もしく思いました。

一方では日本企業のコーポレートガバナンス改革は、一定の成果をあげた、従ってあとは従来のやり方で経営するのが平均的な姿と捉えることもできます。それら平均的企業にコーポレートガバナンスをいかにして真に経営に生かす形に変え、行動しなければならないと気付かせ、前進させるのが日本取締役協会の求められる今後の課題の一つではないかと強く感じました。

コーポレートガバナンス改革

コーポレートガバナンス改革は形から実質へと変わらなければなりません。それは企業経営の進め方をより合目的にまとめあげ、市場での競争力を高め、中長期的成長力を強め、株価にも反映されるものでなければなりません。そうした流れを作りだすには実質の意味するもの、その内容のコンセンサスを日本の経済界で確立させることが求められます。

前任者から指名され、次の人に大過なく会社を引き継ぐことを目的としたCEO。案件処理に追われる取締役会。事務局からの議題を粛々とこなす議長。自身の経験に基づき大所高所から意見を述べる独立取締役。その姿は決して悪いこととは言えないものの今求められているコーポレートガバナンスの本質からは遠いものともいえましょう。

どの業種においても常にイノベーションを考え、従来の業務の充実と将来の成長を計画し、その成果を出し続けるCEO執行部。それを監督し良い方向へ導く取締役会。その為の議題を設定する議長など、それぞれの役割は各社いろいろあるものの、コアとなるべき事柄の認識をより統一し、多様な目的に分散しないことが求められます。

今後はCEO、独立取締役、取締役会、議長などコーポレートガバナンスを担う機関の役割、仕事を明確にしていくことも重要な課題のひとつとなってきます。言い換えるならば、市場や社会が求めている成果に結びつく行動と成果が得られる体制を作っていくことが経営に携わる人々の使命となってきます。

本年度の活動

長年の協会活動からコーポレートガバナンスを改革するにはトップであるCEOの強い意志、あるいは社外取締役の自覚した役割の遂行のいずれかが必須の要件だと思われます。同時に市場からの強い圧力や独立取締役個々がその役割を十分認識し、それらが相互に作用しないと機能しません。

日本取締役協会としてコーポレートガバナンスを中核としてこれから関わるべきテーマも広がってきております。

その中で、本年度は次の段階を模索する時期ともいえます。具体的行動を分かりやすく解説する試みなどを行い、多くの会員との議論を踏まえたCEOの在り方、独立取締役の役割という二つのテーマのレポートを公表したいと考えています。それらが皆様のご参考となり更なる高みへと仕上がっていければと考えています。

更にこれから経営を担う人々に向かって、コーポレートガバナンスが理解できるよう、協会機関紙の発行を計画しております。この出版物を通じてコーポレートガバナンスの基本を広く浸透させることが出来たらと思います。

コーポレートガバナンスが形から次のステージに向けて全般的なレベルの向上に対してどのように資することができるかを念頭に置き、我々協会活動に携わるメンバーは一丸となって活動したいと考えております。それが現在の日本取締役協会に求められる喫緊の課題と受け止め、協会活動の主役である会員の皆様とともに本年度も日本企業の成長に役立つことが出来る多くの行動をしていきたいと思っています。

(2019年5月14日 第17回会員総会 会長所信より)