コーポレートガバナンスで
企業と経済の成長に向けた
ムーブメントを起こす
日本取締役協会 会長 冨山和彦
Message
コーポレートガバナンスで
企業と経済の成長に向けた
ムーブメントを起こす
日本取締役協会 会長 冨山和彦
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会長就任3年目の振り返りとして、当協会(JACD)の会員数は順調に増加、委員会・セミナーなどの開催数も増加し、更に活発な展開を行うことができた。昨年度は活動重点項目として三点を掲げた。
まず取締役研修プログラムの充実については、大きくアップデートしたプログラムを2年目として展開、増加かつ進階した受講者からの高い満足と評価を得ることが出来た。
次に、指名委員会等設置会社制度の改定にJACDは積極的に取り組んだ。法学者、機関投資家、企業経営者、専門家からなる委員会を協会にて組織して、省庁のオブザーブもいただきながら開催。25年1月には提言書を取りまとめて公開、法務省に対して提出した。4月以降には法制審議会会社法部会で議論が開始される見込みであり、将来の会社法改正への期待も高まった。
最後に、未上場企業のガバナンスに関しては、委員会による検討が着実に進行中で、25年度末に提言書として発表する予定である。
その他、一般参加が可能な公開セミナーを3回開催、ガバナンスに関係する声明・提言を3回公表した。これらの活動を通じて、JACDの活動及び意見を広く世の中に示し、同時に関心を醸成することが出来たものと認識している。
4年目となる2025年度活動テーマについて、おかげさまでコーポレートガバナンスは今や人口に膾炙する概念となり、現在、その実質化を巡る方法論についての論争はあるものの、ガバナンスの強化が不要であるかのような議論はほとんど聞こえなくなった。
各企業でのコーポレートガバナンス向上への努力が、日本市場全体への信頼・評価の向上へとつながり、海外機関投資家からの資金流入、底堅い株価の上昇を呼び起こしており、まさに良好な正のスパイラルが形成されつつあると認識している。
そんな中JACDでは、以下の全体方針案に基づき、2025年度を含む中期的に協会活動を以下のように展開していく。「日本取締役協会は、独立した社外取締役が大多数を占めるモニタリング型の取締役会を目指し、経営者の成績を上げて、企業の稼ぐ力をより高めていくことを目指して活動していく。それらを達成することにより、海外を含めた投資家がより企業を後押しして、日本経済を更に成長させる。」
委員会活動、セミナー等の活動を引き続き活発かつさまざまな形式で開催していくことに加え、上記全体方針を具現化するために必要な3つのテーマについて、更なる重点強化を企図している。
第一に、各種取締役研修の更なる活性化と拡大を図る。JACDではコーポレートガバナンス実質化の鍵は何より「担い手」にあると認識している。取締役会の実効性向上には、企業価値を創造できる強い"執行"と、価値を棄損しないよう監視する"監督"との両輪の整備が必要不可欠だと考える。
近い将来には、独立社外取締役が取締役会の過半を占め、少数株主を含むすべてのシェアホルダーの意見を代表しながら、必要時には果断にCEOの選解任を行うような企業が、我が国で太宗を占めるとJACDは予測する。そのためにも独立社外取締役が果たすべき役割を常に明確化して、取締役研修を通じて、全取締役の実力の更なる底上げ、つまりは良質なガバナンスの基盤作りを支援していく。
第二に、株式会社の機関設計については、監督と執行が分離されたモニタリング型の取締役会を目指していく。我が国会社法で認められた3種類の機関設計のうち、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社が、モニタリング型であるとJACDは認識する。とりわけ3委員会が法定必置であり、人事権を梃子にした経営に対する牽制が最も効き、海外機関投資家からも一番理解を得やすい指名委員会等設置会社を、将来に向けて推奨していく。法制審議会の機関設計議論を注視しながら、関係省庁・東証とも連携して、CGコードなどのソフトローの整備を働きかけていく。独立社外取締役候補の人材マーケットの整備や稼ぐ力を強化するガバナンスニーズの高まりの現状を鑑みるに、"プライム市場上場企業は指名委員会等設置会社であることをその要件とする"ことも、もはや現実的な段階にまで、我が国企業のガバナンスは向上しつつあると認識している。
最後に、より強いムーブメントを世の中に巻き起こしていくためにも、同じ志を持つ、良質かつ影響力の強い企業が当協会へ加盟することを促進していく。2024年度期中には会員数は総計500名に到達した。次なる目標として1000名の会員数を目指す。そのためにも、従来の人的ネットワークからの企業紹介に加えて、当協会の案内資材を整備し、ガバナンスへの関心が高い企業群へ直接的な紹介活動を開始する。またエンゲージメントの担い手である機関投資家のJACD加盟も勧奨し、一緒になって望ましい今後のガバナンスの在り方を多面的に検討していきたい。
協会活動のトライアル体験のためにオープンセミナーは年間3回開催する。新たに、当協会への認知度・理解度に関するオンライン定点調査を、毎年実施していく。
ガバナンス先進企業に対する表彰制度を、新体制にて継続開催する。模範となる企業を選定し、広報・広告を通じて広く世の中に紹介していく。
本年度も、さまざまな立場からガバナンスを担われている会員の皆様との議論・交流を通じて、協会活動をより活性化させていきたい。日本企業及び社会全体のガバナンス向上へと、微力ながら当協会は貢献して参ります。
(2025年5月15日 会員総会にて 日本取締役協会協会 会長 冨山和彦)