コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2022 受賞企業/受賞者発表

2023年1月16日

日本取締役協会は、企業表彰コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーの2022年度受賞企業/受賞者を決定しました。

本表彰は、コーポレートガバナンスを用いて、中長期的に健全な成長を遂げている企業を応援するため、2015年より開設されました。

受賞企業

Grand Prize Company

株式会社 日立製作所

Winner Company

株式会社 野村総合研究所

株式会社 村田製作所

特別賞・経済産業大臣賞

株式会社 荏原製作所

特別賞・東京都知事賞

株式会社 クボタ

特別功労賞

宮内義彦氏 オリックス 株式会社 シニア・チェアマン

cgoy

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選定方法、選定理由

1)Grand Prize CompanyとWinner Company

入賞各社は、いずれもコーポレートガバナンスを意識した経営を行い、自社を改革しながら、中長期の健全な成長を実現している企業と評価しました。

Grand Prize Companyに選出された日立製作所について、審査委員の伊藤邦雄氏(一橋大学名誉教授)は、「わが国のガバナンス改革は「形式」から「実質」への転換が叫ばれて久しいが、日立製作所はいずれも備えている数少ない事例として高く評価できる。取締役会の外部メンバーの多様性(スキル、国籍、ジェンダー)だけでなく、取締役会事務局のレベルが高い。事務局の存在は目立たないが、「執行と監督の分離」を支え、取締役会の実効性に少なからず寄与する。近年の同社の上場子会社への徹底した取組など、ガバナンスのレベルの高さを雄弁に物語っている」と述べています。

Winner Companyに選出された、野村総合研究所について、審査委員長 斉藤惇氏(株式会社KKR JAPAN 会長、元日本取引所グループ社長)は、「同社はシステム開発に関するソリューション業務が90%を占めており、その2030年に向けた長期ビジョンは明確である。ボードサクセッションは、このビジョンのメジャープレーヤーとなると取締役会で判断したチームが引き継ぎ、かつそのチームリーダーがCEOになると言うユニークな経営スタイルが印象的であった。その目的に沿って海外でのM&Aを行っており、財務的にも改善効果が出ていることは高く評価される。社外取締役に定年制を設けていることなども評価した」と述べました。

同じくWinner Companyの村田製作所について、斉藤委員長は、「以前よりEVA経営を取り入れるなど財務戦略に長けた企業である。現在でもWACCを上回る社内金利を適用し、投資とリターンの時間差問題なども意識した上でROICに注目した、攻めのリスク管理が確立している。ガバナンスの面からは、創業者時代から毎日全社員による社是の唱和を行い、当社の社会還元の使命感を担保する努力をしていることが印象的であった。社外取締役の選考においてはスキルマトリックスをベースに、多様化した人材選考に努力している」と評価しています。

※なお選考には、「みさきの黄金比®」を指標として用いています。みさき投資株式会社 『働く株主®』をコンセプトとしたエンゲージメント投資を専門とする資産運用会社。2013年に設立され、現在企業年金・大学基金など国内外の投資家から資金を受託し、日本の優れた上場企業10数社に厳選した長期投資を行っています。

審査委員会(敬称略)

委員長:斉藤惇(KKR JAPAN会長、元日本取引所グループ社長)、委員:井伊重之(産経新聞 論説委員)、伊藤邦雄(一橋大学名誉教授、CFO教育研究センター長)、江川雅子(成蹊学園 学園長)、太田洋(西村あさひ法律事務所 弁護士)、中神康議(みさき投資 代表取締役社長)

選定プロセス PDF


2)経済産業大臣賞

コーポレートガバナンス改革の「形式から実質へ」の深化に向け、令和3年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、昨年には、経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)が改訂されました。
これらの趣旨を踏まえ、特にガバナンスの根幹である社長・CEO の選任、後継者計画(サクセッションプラン)において、優れた取組を行っていると認められる企業に対して、経済産業大臣賞を付与し、その取組を広く発信することにより、実効あるコーポレートガバナンス改革の推進を図ります。

選定理由

本年度は、社長・CEOの選任、後継者計画のプロセスにおいて優れた取組が行われており、社長・CEOのリーダーシップが結果を出していると株式市場から評価されている企業を選定いたしました。その結果、特に以下の点を評価し株式会社荏原製作所を受賞企業として選定しました。

  • 現社長は法定の指名委員会による3年間に渡る複数回のインタビュー等を含む選任プロセスを経て選任されている。また、指名委員会は代表執行役社長をメンバーとせず、非業務執行の取締役会長及び2名の独立社外取締役の計3名で構成し、委員長は独立社外取締役が務めるなど、執行と監督の分離を徹底的に意識し、コーポレートガバナンス報告書や統合報告書等においても、透明性が高いだけでなく、説明責任への誠実さが表出された報告を行っている。
  • 現在は、6年間に及ぶ育成・選定プロセスである代表執行役社長の承継プランを策定し公にするなど、指名委員会と執行側が連携して時間をかけて「人材育成」と「社長の選定」を実施しており、実効性の高い後継者計画に取り組んでいる。
  • 過去から優れた情報開示を行っているが、現社長も、中長期的な企業価値の向上の視点から、収益性を重視しつつ、人的資本や技術に根差した経営を行っており、そうした経営のビジョンが、コーポレートガバナンスや知的財産などの非財務情報と結びつく形で説明され、分かりやすく投資家に発信されている。
  • 現社長は「技術で、熱く、世界を支える」というスローガンを掲げ、「社会、産業、くらしを支える」ことを存在意義として、創業以来培ってきた「熱と誠」の精神により、社会課題解決を通じて世界の人を幸せにしたいとの思いを持って経営を行っており、こうした点がコーポレートガバナンスの取組にも一貫して反映されている。
  • ROEやROAといった財務パフォーマンスが上昇傾向にあるなど、高い業績をあげている。
  • 以上の点を、対面での社長インタビュー及び指名委員会委員長インタビューにて確認しました。
審査委員会(敬称略)

委員長:橘・フクシマ・咲江(G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長)、委員:大杉謙一(中央大学法科大学院 教授)、澤口実(森・濱田松本法律事務所 弁護士)、三瓶裕喜(アストナリング・アドバイザー合同会社 代表)、芝坂佳子(KPMG Japanサステナブルバリューサービス・ジャパン、有限責任あずさ監査法人パートナー)、中神康議(みさき投資 代表取締役社長)

実施要領 PDF

経済産業省リリース

3)東京都知事賞

東京都では「国際金融都市・東京」構想2.0 (令和3年11月公表)に基づき、ESG投資の推進等に取り組んでいます。東京都知事賞は、コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2022の選考対象企業のうち、コーポレートガバナンスが優れていることに加え、環境対応、女性活躍推進、ダイバーシティ対応、働き方改革などのESG活動を積極的に行っていると認められる企業に対して付与されます。今年度は、以下の点などを評価し、ESGの多角的な視点から取組を進める株式会社クボタを受賞企業として選定しました。

  • 同社は、「豊かな社会と自然の循環にコミットする"命を支えるプラットフォーマー"」を目指し、ESGを事業運営の中核に据え、創業以来、「食料・水・環境」に関わる地球規模の課題に取り組んでいる。
  • E(環境)の観点では、例えばTCFD提言に賛同、気候変動関連のリスクと機会がもたらす財務的影響を開示し、それらを踏まえた事業戦略の立案を進めるとともに、バリューチェーン全体のCO2排出量の削減にも取り組んでいる。
  • S(社会)の観点では、「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」に署名し女性活躍を推進するほか、特例子会社を活用した障害者の雇用創出に取り組むなど、ダイバーシティも積極的に推進している。
  • G(ガバナンス)の観点では、経営層の多様化や、社長直轄のESG推進体制の構築等に取り組んでいる。
4) 特別功労賞

本年度は、日本企業のコーポレートガバナンス改革に長年貢献した個人を表彰する特別功労賞が併せて選定されました。