コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2023 受賞企業発表

2024年1月11日

日本取締役協会は、企業表彰コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーの2023年度受賞企業/受賞者を決定しました。

本表彰は、コーポレートガバナンスを用いて、中長期的に健全な成長を遂げている企業を応援するため、2015年より開設されました。

受賞企業

Grand Prize Company

荏原製作所

Winner Company

味の素

セイコーエプソン

特別賞・経済産業大臣賞

マニー

特別賞・東京都知事賞

積水ハウス

cgoy

®Registered Trademark-登録商標

選定方法、選定理由
Grand Prize CompanyとWinner Company

入賞各社は、いずれもコーポレートガバナンスを意識した経営を行い、自社を改革しながら、中長期の健全な成長を実現している企業と評価しました。

Grand Prize Companyに選出された荏原製作所について、審査委員 伊藤邦雄氏(一橋大学名誉教授)は、「監督の機能不全を機に、すぐに「守り」のガバナンス改革に着手。早くから独立社外取締役を入れ、指名委員会等設置会社に移行。その後に「攻め」のガバナンスに重点を移動。ROIC経営を導入し、知財ROIC、生産ROICにも発展させている。そのプロセスはまさに「Governance (to) Value」そのもの。経営もガバナンスも経営者の「ハンズオン」による実行力が成果を生んだ象徴的事例。」と述べています。

Winner Companyに選出された、味の素について審査委員長 斉藤惇氏(KKR Japan 会長、元日本取引所グループ社長)は、「組織が縦割りにたこつぼ化している現象を破壊するため、意識的に取締役会はもとより経営会議においても外部識者を招聘している。食品業界では珍しい指名委員会等設置会社として法定3委員会(指名、報酬、監査)を導入し、取締役会議長や各委員長は全て十分多様化された独立社外取締役で運営されている。WACCやROICを会社の特性に合わせて意識し、食品事業からアミノサイエンス系事業への展開が期待される。」と述べました。

同じくWinner Companyのセイコーエプソンについて斉藤委員長は、「10名の取締役中過半の6名を独立社外取締役が占め、任意の指名と報酬委員会の長は社外取締役が担っている。同社の特徴はサクセッションプランの実行やガバナンスの実効性を上げることに工夫を凝らしていること。執行役員や執行役員候補者による経営会議で討議された中長期戦略などは社外取締役が閲覧可能で、組織的にサクセッション対象者が社外取締役の目に触れる運営がなされている。」と評価しています。

※なお選考には、「みさきの黄金比®」を指標として用いています。みさき投資株式会社 『働く株主®』をコンセプトとしたエンゲージメント投資を専門とする資産運用会社。2013年に設立され、現在企業年金・大学基金など国内外の投資家から資金を受託し、日本の優れた上場企業10数社に厳選した長期投資を行っています。

審査委員会(敬称略)

委員長:斉藤惇(KKR JAPAN会長、元日本取引所グループ社長)、委員:井伊重之(産経新聞客員論説委員、経済ジャーナリスト)、伊藤邦雄(一橋大学名誉教授)、江川雅子(成蹊学園 学園長)、太田洋(西村あさひ法律事務所 弁護士)、中神康議(みさき投資 代表取締役社長)

選定プロセス PDF

経済産業大臣賞

成長戦略としてのコーポレートガバナンス改革の「形式から実質へ」の深化に向け、令和3年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、その翌年には、経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)が改訂されました。

これらの改訂の趣旨を踏まえ、特にガバナンスの根幹である社長・CEOの選任、後継者計画(サクセッションプラン)において、先進的な取組を行っていると認められる企業に対して経済産業大臣賞を付与し、その優れた取組を広く発信することにより、実効あるコーポレートガバナンス改革の推進を図っています。

選定理由

本年度は、社長・CEOの選任・後継者計画において、先進的な取組を行っており、実効的に運営されている企業を選定いたしました。

その結果、財務パフォーマンスが向上している点も考慮しつつ、特に以下の点を評価し、マニー株式会社を受賞企業として選定いたしました。

  1. 次期CEOの評価・育成・選任を含む実効的な指名プロセスが構築されている。なお、受賞企業では、あるべきCEO像を定めた上で、以下のプロセスを構築している。
    1. 次期CEO候補者(複数名)が、あるべきCEO像に基づき自己評価を行った上で、自身に不足していると考える事項について自己研鑽計画書を作成し、取締役会(過半数が独立社外取締役)に提出するとともに、その取組結果について、取締役会に対して中間報告と期末報告を行い、それを踏まえて指名委員会が候補者の絞り込みを行っている。
    2. 次期CEO候補者(①に基づき絞り込まれた複数名)が、取締役会において、「私の経営持論」をテーマに、「私が目指す5年後、10年後のマニーの姿」と「そのために必要な戦略」について触れながらプレゼンテーションを2回行い(※)、次期CEO候補者を評価している。
      ※1回目のプレゼンテーションにおける取締役からの指摘を踏まえ、2回目に改善した内容のプレゼンテーションを行っている。
    3. CEO交代の1年前に、次期CEO候補者の自己研鑽計画書の最終報告を受け、次期CEOを1名に仮決定している。
    4. 仮決定後も、就任までの1年間、次期CEOが自己研鑽計画書を提出し、期待通り成長できているかについて、取締役会が最終確認を行うなど、慎重なプロセスを経ている。また、その間に次期CEOは、他の執行役と企業の将来像を議論しながら中期経営計画の作成を行うなど、十分な準備期間が確保されるとともに、スムーズな権限移譲が行われている。
  2. 毎年、経営環境の変化や課題等に応じて、組織の在り方と執行役の役割の見直しを行い、戦略的に最適な配置となるよう工夫している。
  3. 人材配置も含めて営業部門と開発部門の連携を密に図るなど、企業全体が一丸となり、製品の付加価値を高める意識が醸成されている。
  4. 創業家自身がコーポレートガバナンスの重要性をいち早く認識し、創業家の経営関与を排除する観点から、委員会等設置会社(現指名委員会等設置会社)へ移行する等、コーポレートガバナンス改革を着実に実施し、社外取締役が取締役会議長を務めるなどの取組を進めている。

以上のように、戦略性・透明性・権限の偏りの排除を尊重しつつ、CEO候補者の主体的な取組からリーダーシップを醸成する等、自社の実状に応じてよく考えられた仕組みが構築され運用されていることを、社長及び指名委員会委員長へのインタビューで確認いたしました。

審査委員会(敬称略)

委員長:橘・フクシマ・咲江(G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長)、委員:大杉謙一(中央大学法科大学院 教授)、澤口実(森・濱田松本法律事務所 弁護士)、三瓶裕喜(アストナリング・アドバイザー合同会社 代表)、芝坂佳子(芝坂佳子企業報告研究所代表))、中神康議(みさき投資 代表取締役社長)

経済産業省リリース

実施要領

東京都知事賞

東京都では「『国際金融都市・東京』構想2.0」(令和3年11月公表)に基づき、ESG投資の推進等に取り組んでいます。東京都知事賞は、コーポレートガバナンスが優れていることに加え、環境対応、女性活躍推進、ダイバーシティ対応などのESG活動を積極的に行っていると認められる企業に対して付与されます。今年度は、ESG経営の多角的な視点から取組を進める積水ハウス株式会社を受賞企業として選定しました。

  • 同社は、"「わが家」を世界一幸せな場所にする"ことをグローバルビジョンとして掲げ、企業価値の向上に取り組んでいる。この実現のため、「良質な住宅ストックの形成」、「持続可能な社会の実現」、「ダイバーシティ&インクルージョン」の3つを重要課題に位置付けている。
  • 「ダイバーシティ&インクルージョン」では、例えば女性活躍の取組を推進し、建設業界平均を大きく上回る比率の女性従業員が活躍されているほか、女性管理職の増加に向けて「ウィメンズ カレッジ」を毎年開講し、着実にその数が増加している。また、男性の育児休業取得を推進し、対象社員100%の取得率を達成しているほか、東京都の「こどもスマイルムーブメント」に参画している。さらに、各部署1名以上で障がい者の定着を目標に設定し、法定雇用率を大きく上回る雇用率を実現している。
  • 「良質な住宅ストックの形成」、「持続可能な社会の実現」の観点では、戸建住宅における「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」の比率を93%まで高め、住宅業界をリードしているほか、「RE100」に業界でいち早く加盟し、自社が施工した住宅オーナーからFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取)期間が終了した電力を買い取り、自社の事業用電力として活用する取組を進めるなど、環境に配慮した取組を推進している。