コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2024 受賞企業発表

2025年1月14日

日本取締役協会は、企業表彰コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2024の受賞企業/受賞者を決定、今回10年目にあたる本表彰では、初めてGrand Prize Company(大賞)を2社が受賞することになりました。

本表彰は、コーポレートガバナンスを用いて、中長期的に健全な成長を遂げている企業を応援するため、2015年より開設されました。

受賞企業

Grand Prize Company

富士通

リクルートホールディングス

特別賞・経済産業大臣賞

横河電機

特別賞・東京都知事賞

パーソルホールディングス

cgoy

®Registered Trademark-登録商標

選定方法、選定理由
Grand Prize Company

入賞各社は、いずれもコーポレートガバナンスを意識した経営を行い、自社を改革しながら、中長期の健全な成長を実現している企業と評価しました。

Grand Prize Companyに選出された富士通株式会社について、審査委員 太田洋氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー弁護士)は、「同社の特徴は、独立社外取締役が取締役会の議長を務めるとともに、非執行の社内取締役が議長の補佐をする体制を整え、取締役会の過半を独立社外取締役が占めるとともに、投資家も独立社外取締役として迎え入れるなど、多様な視点を取締役会に取り入れている点である。そのようなガバナンス体制を整える中で、ハードからソフトの会社へと大きな変革を遂げ、旧来の日本の伝統的大企業を指すJapanese Traditional Company (JTC)ではなく、Japanese "Transformational Company"の代表となっている点が高く評価できる」と述べています。

同じくGrand Prize Companyに選出された株式会社リクルートホールディングスについて、審査委員 伊藤邦雄氏(一橋大学名誉教授)は、「コーポレートガバナンス(CG)を巡っては本質的な問いがある。CGは本当に稼ぐ力を高め、企業価値を高めるのか。この問いに明快に答えを出した企業がある。リクルートホールディングスだ。同社は経営戦略とCGを見事に融合している。長期戦略の策定、CEOのスキル要件と在任期間、M&Aの果断な実行、無形資産を重視したバランスシート経営等。それを支えているのが社外取締役のスキルだ。その成果は日本企業屈指の高い企業価値、PBR、資本収益性に如実に現れている」と述べました。

※なお選考には、「みさきの黄金比®」を指標として用いています。みさき投資株式会社 『働く株主®』をコンセプトとしたエンゲージメント投資を専門とする資産運用会社。2013年に設立され、現在企業年金・大学基金など国内外の投資家から資金を受託し、日本の優れた上場企業10数社に厳選した長期投資を行っています。

審査委員会(敬称略)

委員長 斉藤惇(KKR Japan 会長、元日本取引所グループ社長)
委員 井伊重之(産経新聞客員論説委員、経済ジャーナリスト)、伊藤邦雄(一橋大学名誉教授)、江川雅子(成蹊学園 学園長)、太田洋(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー 弁護士)、翁百合(日本総合研究所 理事長)、中神康議(みさき投資 代表取締役社長)

選定プロセスPDF

経済産業大臣賞

成長戦略としてのコーポレートガバナンス改革の「形式から実質へ」の深化に向け、令和3年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、その翌年には、経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)が改訂されました。

これらの改訂の趣旨を踏まえ、特にガバナンスの根幹である社長・CEOの選任、後継者計画(サクセッションプラン)において、先進的な取組を行っていると認められる企業に対して経済産業大臣賞を付与し、その優れた取組を広く発信することにより、実効あるコーポレートガバナンス改革の推進を図っています。

選定理由

本年度は、社長・CEOの選任・後継者計画において、先進的な取組を行っており、実効的に運営されている企業を選定いたしました。

その結果、特に以下の点を評価し、横河電機株式会社を受賞企業として選定いたしました。

  1. 2015年の設置以来、指名諮問委員会(当時)は、次期社長や役員の選考と育成を目的とした経営者育成・評価プログラムを策定し、運用している。同プログラムでは、次期社長や役員に求められる資質や人物像を明確にするとともに、複数の候補者を選定し、研修や挑戦的な職務経験などを通じた育成や評価(外部機関を活用した第三者評価、360度評価を含む)を行っている。2019年に就任した現社長は、同プログラムの中での4年間にわたる育成や評価などの結果に基づき選定されている。また、社長の選定基準については、同委員会での議論に基づき、随時の見直しが行われており、次期社長の評価・育成・選定を含む実効的な指名プロセスが構築されている。
  2. 指名委員会において選定・再選定・解職の基準及びその手続を定めており、毎年、指名委員会が、単年度の業績、中期の数値目標の達成、後継者の育成、リーダーシップ(360度評価)等を含めた8項目(現在)の評価基準を用いて代表執行役社長の評価を行うこととしている。当該評価結果とサクセッションプランも踏まえて再選定に関する審議(被評価者である代表執行役社長は一時離席)を行っており、代表執行役社長の再任・不再任プロセスの客観性、透明性、継続性が確保されている。また、当該評価結果は、良い点、改善点と合わせて代表執行役社長にフィードバックされ、翌年度以降の経営執行に有効に活用されている。
  3. 指名委員会委員長及び取締役会議長がいずれも独立社外取締役である。また、執行側からの提案により、本年度より、指名委員会等設置会社に機関設計を変更し、経営における監督と業務執行の機能・役割を明確に分離し、監督機能を強化するとともに、業務執行については執行役として結果責任を負う体制とし、業務執行・意思決定の品質とスピードアップを図る等、コーポレートガバナンス改革を着実に進めている。
  4. ビジネスモデルをプロダクトアウトのモデルからソリューション型に変え、地域会社含めて事業セグメントを石油・ガス中心のものから3つのセグメント(エネルギー&サステナビリティ、マテリアル、ライフ)に改める等、ビジネスモデルの転換に全社的に取り組んでおり、その中で、設備投資等の成長投資も積極的に行う等、経営陣によるリスクテイクが行われている。また、そうしたビジネスモデルの転換について、現場の理解も深まっている。
  5. PBRやTSRが高水準であり、ROEやROAが上昇傾向にあるなど、高い財務パフォーマンスを実現している。

以上のように、社長・CEOの選任・後継者計画を含め、コーポレートガバナンスの取組を着実に実行し、業績向上を達成している好事例であることを、代表執行役社長及び指名委員会委員長へのインタビューで確認しました。

審査委員会(敬称略)

委員長:橘・フクシマ・咲江(G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長)、委員:大杉謙一(中央大学法科大学院 教授)、澤口実(森・濱田松本法律事務所 弁護士)、三瓶裕喜(アストナリング・アドバイザー合同会社 代表)、芝坂佳子(芝坂佳子企業報告研究所代表))、中神康議(みさき投資 代表取締役社長)

経済産業省リリース

東京都知事賞

東京都では、「サステナブルな社会を実現するアジアのイノベーション・金融ハブ」を目指し、積極的にESG活動等に取り組む企業を支援しています。

「東京都知事賞」は、G(コーポレートガバナンス)が優れていることに加え、S(社会〔ダイバーシティ・働き方等〕)とE(環境〔サステナビリティ等〕)で優れた取組を行っている企業を表彰するものです。今年度は、"もっともっと人を輝かせる東京"の実現に向け、環境への取組に加え、女性活躍等のダイバーシティへの対応や都が進める施策への貢献などを踏まえ、パーソルホールディングス株式会社を選定しました。

選定理由
  1. 同社は、すべての人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる持続可能な社会の実現に向け、人材派遣や転職・就職サービス、障がい者雇用・就労移行支援など、「働く」に特化した多様なサービスを展開している。
  2. S(社会)の視点では、ダイバーシティの推進として、同社単体で女性管理職比率34.5%、グループでの女性採用比率50%以上と高い水準に達しており、女性が一層活躍できる社会の実現に貢献している。また、男性の育児休業等取得率を2025年度までに100%とする目標を掲げ、男性が参加する「おむつ替え講習会・選手権」などユニークな取組を展開している。障がい者雇用にもグループ全体で積極的に取り組んでおり、2023年度には3,000名近い雇用を行った。
  3. E(環境)の視点では、気候変動への対応として、グループの全使用電力の再エネ化を目指し、今年4月には本社ビルの全使用電力を再エネ化した。また、東京都がテナントビルの省エネ推進のために実施している「特定テナント等事業者」の認定において、優良事業者(AA)となるなど、東京都の取組にも貢献している。