2017年8月 7日
ゲスト:フィデアホールディングス株式会社 顧問(前・社長兼CEO) 里村正治氏
形式上は整いつつあるコーポレートガバナンス。次の段階として、実際の経営改革にどの様に役立っているかを示すことが課題として浮上しています。
第13回は、設立当初から委員会設置型の機関設計を採用している、フィデアホールディングス株式会社の里村正治氏に、コーポレートガバナンスの質を高めるための方策を語っていただきました。
ここ数年にわたり、大手行に限らず地域金融機関においても、各行の実情に応じた企業統治(コーポレート・ガバナンス)改革が進みつつある。
特に、取締役会の構成に関しては、社外取締役を過半数にして、取締役会の独立性を確保する取組みには長足の進歩が窺える。一方、①リスクアペタイト・フレームワークの構築、②監査委員会が、経営者の業務執行状況を客観的に評価する「アシュアランス機能」の構築等は、いくつかの好事例が出てきているものの全体としては、まだこれからと言ってもよいだろう。
2009年10月1日、銀行持株会社として設立したフィデアホールディングス㈱は、グループ内に荘内銀行(本店:山形県鶴岡市)、北都銀行(本店:秋田県秋田市)を有す。 設立当初から委員会設置型の機関設計(今の「指名委員会等設置会社」)を選択し、現在に至っている。
日本には「形から入れ」という文化が根付いていると云われる。茶道、華道、柔道、剣道...野球の素振り練習も「形から入る」例だろう。フィデアホールディングス㈱の企業統治改革も最初の機関設計の選択も含めて、先ずは、日本文化に馴染みやすい「形から入る」ところから始まった。
今、多くの上場企業で企業統治改革が進む中、金融機関については、上述①②のような課題が残るも、取締役会の独立性を担保する「形」は整いつつある。
今後は、夫々の企業文化、成長戦略、適材適所の人材育成状況などを総合的に捉えた"良き知恵"を基にその「質の充実」へ向けた一層の取組みが求められる。拙論では、この観点からの今後の企業統治の進むべき姿を考えてみたい。
わが国の企業統治は、グローバルな経営環境が激変している中で、監督当局の指導、機関投資家からの強い意見、法改正など、多岐にわたる整備と種々のインセンティブなしには進まなかっただろう。
今後は、金融機関も含めて多くの日本企業が、更なる「質の充実」を伴う企業統治改革に自らの責任で取り組み続けることが、最も大切なことであろう。
*なお、本稿に記載された意見はすべて筆者の個人的な見解に基づいて書かれております。
里村政治(さとむらせいじ)フィデアホールディングス株式会社 顧問(前・社長兼CEO)
1969年 富士銀行入行。同行人事部次長、ニューヨーク支店上席副支店長兼富士銀行信託会社上席副社長、総合事務部長、融資企画部長、取締役小舟町支店長、代表取締役常務(関西駐在)の後、リスク統括(CRO)やコンプライアンス統括 (CCO)等を歴任。
2002年に荘内銀行へ転じ、代表取締役副頭取。2008年取締役・代表執行役会長に就任。
2009年フィデアホールディングス㈱ 取締役・代表執行役社長兼CEOに就任。 2011年北都銀行非常勤取締役、荘内銀行非常勤取締役。2016年6月より現職。東京大学教養学部卒、ハーバード大学院AMP修了。