社外取締役の機能不全を回避するための施策

2026年3月10日

八田進二(青山学院大学 名誉教授)

[ 雑誌「コーポレートガバナンス」Vol.20 - 2025年12月号 掲載 ]

わが国の場合、社外取締役は、本当に、実効性ある機能を果たすことができているのであろうか。そもそも社外取締役には、稼ぐ力を高め、企業価値を向上させるために執行サイドを適切に監督する点に主たる使命がある。それは、経営の執行と監督を峻別することで、健全なガバナンスを構築することを目指しており、その際の監督機関としての中核的機能を社外取締役が担うことが期待されているからである。

しかし、実際には、多くの企業では、社外取締役に対して、しかるべき専門分野や過去の経験からの助言やアドバイスを得ることを想定しているようであり、そのために、経営の監督を第一義に捉えて、企業の持続的成長に資する貢献が見えないことでの批判が後を絶たないのである。それどころか、取締役会の実効性を確保するためと称して、各取締役候補の選定に関して「スキルマトリックス」という形で一覧化したスキル項目の開示がなされ、該当項目に丸印をつけて、あたかも、取締役として適格であることを説明しようとしているのである。

つまり、コーポレートガバナンスの改善が進み、複数の社外取締役が定着してきているにもかかわらず、社外取締役に対する投資家等のステークホルダーからの評価が低い点に大きな課題があるといえる。実際に、生命保険協会の調査(「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート集計結果(2024年度版)」)によると、「社外取締役の役割が期待どおり十分に果たされている」と回答した企業は半数を超えるものの、投資家サイドの半数以上は、「不十分であり、改善の余地がある」と回答しており、双方の認識に大きなギャップが見られる。

企業からは、独立した立場から客観的な意見や助言が得られることで、従来の体制と比して、開かれた取締役会になっていると前向きに評価しているものと思われる。一方、投資家からみれば、そもそも、健全なガバナンス体制の構築の視点から見て、企業価値の向上どころか、不祥事が顕在化した時であっても、社外取締役の姿が見えず、まさに、お飾りになっているとの疑念が払拭されていないように思われる。それこそ、「仏作って魂入れず」の例えにも相通じるものであり、実効性の高い社外取締役の在り方とその活用に関して、今こそ、原点に立ち返って、真剣にその役割および機能について納得のいく回答を共有すべき時期を迎えている。

そのためには、まずは、現在の「コーポレートガバナンス・コード」の「原則4-7独立取締役の役割・責務」の1番目に規定の「経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと」と2番目に規定の「経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと」の順番を変えて、第一義的に、「経営の監督」であることを明確にすべきである。真面目に遵守することを好む日本人気質として、「たかが、コードの規定」であろうが、「されど、コードの規定」なのであり、社外取締役の実効性を高めるためにも、早急にコードの見直しがなされるべきである。

八田進二
青山学院大学 名誉教授

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