2002年の12月に、(株)東京証券取引所の上場会社コーポレート・ガバナンス委員会委員長を仰せ付かり、ほぼ一年半かけて「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」をとりまとめた。当時は、コーポレート・ガバナンスについての理解が不十分で、それを否定する考え方がある一方、教条主義的な意見も出され、まとめるのに大変苦労したことを思い出す。
その頃とくらべると、状況は一変した。政府が成長戦略の一環として、コーポレート・ガバナンスを充実するべく、リーダーシップを発揮している。ほぼ全ての上場会社に社外取締役を置くことを義務づけるなど、積極的に働きかけている。
政府に言われたからやるというのは、いささか問題があるとも思うが、コーポレート・ガバナンスが急速に普及しつつあるのは結構なことだと思う。ただし、問題は形式主義に陥るということだ。形式だけ整えば良いというのは避けなければならない。事実、その傾向が若干見られるような気がするので心配している。
いうまでもなく、コーポレート・ガバナンスにおいて最も重要なことは、力のある優れた最高経営責任者(CEO)の存在だ。
と同時に、社外取締役を中心とする、その経営者をチェックする仕組みが存在しなければならない。それは経営者が存分に力を発揮するためにも必要なことだ。
優れた経営者とそれをチェックする仕組みの存在が基本であることを忘れてはならない。
キッコーマン株式会社
取締役名誉会長 取締役会議長
茂木友三郎