LEGENDS & THEIR HEIRS レジェンドとその想いを継ぐ者 吉丸由紀子×藤木貴子

2025年2月 6日

吉丸由紀子(積水ハウス 社外取締役、ニチレイ 社外取締役)
藤木貴子(グーグル合同会社 上級執行役員 マネジングディレクター、ダイワボウホールディングス 社外取締役)

[ 雑誌「コーポレートガバナンス」Vol.17 - 2024年12月号 掲載 ]

企業のエグゼクティブとして、ダイバーシティ改革を切り開いてきた世代が、率直にその思いや決意を語ります。さらに次世代へのエールも送ります。

遠慮しないで、機会があるならやってみる
YUKIKO YOSHIMARU

小さな成功を積み重ねて
TAKAKO FUJIKI


吉丸由紀子

藤木さんに初めてお会いしたのはダイワボウ社外取締役就任時です。互いに事業執行経験者という共通点は認識していましたが、藤木さんは新任でおられたにもかかわらずガバナンス・中長期目線で発言するなど、当初から社外取締役としての役割を果たされ、驚きました。それにいい意味で忖度しない(笑)その点も共通点です。

私自身は日本の大企業で長く業務執行に従事し、海外勤務も経験しましたが、上司に恵まれたのと同時にいつ辞めてもいいと思っていたフシもあり、上位者の顔色を見ないで済んできたというのでしょうか。覚悟があると怖いものはそれ程なく、節度と伝え方は留意しながらも遠慮せずに発言してきました。招聘企業にはガバナンス向上への強い思いがあります。期待値が明確なので、独立社外取締役としての発言や質問を通じ、企業の持続的成長に貢献すべく「怖いものなし」のスタイルを続けたいです。

多様性の観点では、企業も二極化していると感じます。先進企業は、トップ自らが真剣にリーダーシップを発揮しています。一方で、形式だけの企業もまだあるようですが、市場で生き残っていく為にもトップ のマインドは変わるのではないでしょうか。社内からの抜擢も進んできてはいますが、加速が必要。とにかく機会をつくることです。失敗を恐れず覚悟を持って登用して欲しい。この先日本企業がイノベーションやグローバル化を進めるには女性や海外人財の活躍が不可欠と、言い続けている感じです。

コーポレートガバナンスの根幹は、ステークホルダーに企業がどのくらい目を向けられるかです。機関株主・投資家と我々社外取締役が直接対話する機会も増えています。企業は誰のためにあるのか。株主・投資家や社外取締役の質問に執行側がきちんと説明することでガバナンスが向上し企業の成長に繋がります。その為には社外取締役も学びつづけ、企業の将来を考え続ける。

これから役員になる人たちに申し上げたいのは、遠慮しないこと。機会があるならやってみるし、疑問があればテーブルに載せ議論を促す事ではないでしょうか。

藤木貴子

吉丸さんは、社外取締役として、経営者として、私のロールモデル的な存在です。社外取締役として果たすべき役割を踏まえ、取締役会に臨まれる姿や、常に中長期な視点で企業をどう成長させていくか、コーポレートガバナンスを見据えた本質的な指摘や発言、そのまっすぐな姿勢にも共感しています。事業の責任者としてビジネスに深く携わってこられた経験を基盤として、自分の考えや見方を確立されています。新任の頃に、吉丸さんのようなロールモデルに巡り会えたことは、とても幸運で心強かったですね。「忖度しなくてもいい」という姿勢も学びました(笑)

多様性については、それによってもたらされるイノベーションや、ビジネス成長との関連性を経営トップが理解し、仕組みづくりやアクションを取っているかどうかが大事です。例えば、消費者の価値観、ユーザーの嗜好などが多様化している時代に、企業が素晴らしい製品やサービスを提供したい、ビジネス成長を加速したいと考えるのであれば、提供する側も同じようにジェンダーや経験も含めた多様な人材がいなければ、真のニーズを理解するのは難しいからです。昨今、企業価値を上げることが、企業活動の最大の目的となっています。社会や株主に対して、企業の存在意義を見せる、その仕組み作りがコーポレートガバナンスに直結します。明文化されたパーパスや文化が企業に根付いているかも大切です。社外取締役として、ステークホルダーの視点を考慮しつつ、企業に対して自分がどう貢献し、価値を出していくかを意識して発言しています。

女性活躍推進については、前述した「多様性がもたらすビジネスへの恩恵」を経営者が理解しつつ、「小さな成功」を積み重ねていくことが大事だと思います。私が今ここにいるのも、後押しをしてくれた上司や吉丸さんのようロールモデルからの惜しみないサポートと、相談できる社外取締役のネットワークがあるからです。これから役員を目指す方、まず前に出てみる、いかなるチャレンジにも、イエス!やります!といってみる事を強くおすすめします。

吉丸由紀子氏

吉丸由紀子 YUKIKO YOSHIMARU
積水ハウス 社外取締役、ニチレイ 社外取締役
沖電気工業 米国法人取締役(在ニューヨーク)、日系商社欧州法人(在ロンドン)、日産自動車 ダイバーシティディベロプメントオフィス室長、ニフコ執行役員を歴任し、2018年積水ハウス 社外取締役、同社人事・報酬諮問委員会委員長(現任)、2019年三井化学 社外取締役、2021年ダイワボウHD 社外取締役(現任)、2024年ニチレイ 社外取締役(現任)、経済同友会幹事(現任)

藤木貴子氏

藤木貴子 TAKAKO FUJIKI
グーグル合同会社 上級執行役員 マネジングディレクター、ダイワボウホールディングス 社外取締役
インテル米国本社でエンタープライズシステム導入やEコマースプロジェクトの企画・立ち上げ、アジア地区統括を経験。帰国後、インテル日本法人で経営戦略・サプライチェーン統括、営業本部長として大手電機メーカーを担当し、エンタープライズ・IoTソリューション事業に注力。日本企業のグローバル展開をサポート。現在はグーグル日本法人でマネジングディレクター セールスとして、通信、金融、人材、Eコマース、教育、不動産、ゲーミング、エンターテイメント業界等の広告事業に携わる。

撮影:小泉 賢一郎