社外取締役・取締役会に期待される役割(2014)

2014年3月 7日

コーポレートガバナンス改革が指向するモニタリングモデルの取締役会における、取締役・社外取締役が行うべき役割をわかりやすく解説した、先見の提言

この提言は、我が国の上場会社において社外取締役の選任が一段と拡がる現状を踏まえ、選任された社外取締役に期待される役割は何か、さらには社外取締役の職務と表裏の関係にある取締役会の役割とは何かについて、日本取締役協会の考えを明らかにするものです。

企業価値向上に向け、経営者の評価が重要

本提言の考え方の基本は、経営者の「監督」を重視した取締役会の形態であるモニタリング・モデルです。

具体的には、その本質を「経営者の評価」とし、個別の業務執行についての決定や、その内容に細かい注文を付けることでもなく、また個別の不祥事を発見することでもありません。「評価」とは、経営者が策定した経営戦略・計画、その成果が妥当であったかを検証し、最終的には現経営者に経営を委ねることの是非について判断することです。

その前提として成果を示す財務情報の信頼性、成果に応じた報酬、利益相反行為の抑止、リスク管理体制などのシステムを構築し、そのチェックも自ずから期待される役割となります。それらモニタリング・モデルが機能するためには、特に監査役設置会社においては取締役会の審議事項や審議方法の適切な設置が重要となります。これら取締役会、社外取締役に期待される役割が正しく運用されるならば、多くの株主からの信頼強化に繋がると同時に企業価値の向上への期待が高まることが予想されます。

座長 井口武雄 委員長 冨山和彦

この提言は監査等委員会設置会社研究会(座長 井口武雄)*注1と、独立取締役委員会(委員長 冨山和彦)*注2が研究成果として提言したものです。同時に当協会では、独立取締役の人材不足解消をはかり、その就任を促進するため、会員からなる社外取締役の候補者リストを作成し希望する企業への紹介を行っています。また本提言に基づき、社外取締役のためのトレーニングを今年中に開設する予定です。

img140307_03.jpg
協会長・宮内義彦コメント

「日本の上場会社は、欧米の企業と比べて資本効率が低く、稼ぐ力が弱いと言われている。今後、社外取締役の導入など、コーポレート・ガバナンスを充実させるには、取締役会における経営者の成果に対するモニタリングが重要になってくる。これが機能すれば、日本企業の今後さらなる成長の可能性が増し、日本経済の発展に大きな力となる。」

*注1:三井住友海上火災保険 株式会社 シニアアドバイザー
*注2:経営共創基盤 代表取締役CEO

当提言の作成には、監査等委員会設置会社研究会 副座長 澤口実氏(森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士)
アドバイザー 落合誠一氏(中央大学法科大学院教授・東京大学名誉教授)のご協力をいただきました。

「社外の羅針盤」(フジサンケイビジネスアイ特集)→こちらから