企業価値向上と社外取締役

2020年8月10日

原良也(日本取締役協会 副会長、株式会社 大和証券グループ本社 名誉顧問)

[ 雑誌「コーポレートガバナンス」Vol.3 - 2020年4月号 掲載 ]

株主である機関投資家の活動は活発になってきた。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードによるガバナンス改革は、機関投資家の行動を大きく変えた。機関投資家が活動することで、未成熟な日本の資本市場も大きく変化へ動き出した。

機関投資家にとっては、運用成果(パフォーマンス)を上げることが目的であり、結果を出すことに必死である。そのために会社側にエンゲージメントするのは当然であり、それがスチュワードシップ・コードのねらいである。

同時にコーポレートガバナンス・コードでは、社外取締役が独立の立場で、株主やステークホルダーの声を聞き、取締役やCEOに伝え、取締役会の議論に生かしていくことになった。社外取締役の活躍が期待されている。会社法も改正され、社外取締役の設置が義務付けられた。法的に決められた社外取締役の働きと成果が問われることになる。

そもそも社外取締役はガバナンス改革の柱であり、その期待される役割・機能は、経営トップの監督・評価と共に、経営戦略や指名・報酬の決定にも関与し、内部統制部門のモニタリングを行い、限りなく取締役会の機能の向上を図ることである。

株主とのエンゲージメントも重要であり、社外取締役にこそ独立の立場で株主の声・情報を取締役会に生かしていく重要な責務がある。資本市場がガバナンスを鍛えるのと同時に、ガバナンス改革も資本市場を育て、鍛える。また企業の取締役会と、株主との緊張ある関係が、各企業の攻めのガバナンスに通じるのである。

CEOが会社の将来を決めるのは当たり前として、社外取締役の働きが会社の将来を決めるといってしまえばオーバーかもしれないが、CEOを守り、監督・評価し、そして持続的に、企業価値向上の為の助言を行う、大きな存在である。

それだけに能力の高い社外取締役をどれだけ多く擁しているかが、その企業への機関投資家からの投資判断を左右するだろう。

日本取締役協会 副会長
株式会社 大和証券グループ本社 名誉顧問
原良也