CEO選任プロセスの機能充実を

2022年1月10日

橘・フクシマ・咲江(G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長)

[ 雑誌「コーポレートガバナンス」Vol.8 - 2021年12月号 掲載 ]

1995年に米国企業本社の社内取締役に就任し、2002年からは花王・ソニー・味の素等の日本企業12社の社外取締役を務め、日米のコーポレートガバナンスに関わりながら30年近くが過ぎた。

その間、「誰のためのガバナンスか」と言う点で両極端にあった日米のコーポレートガバナンスは、どちらも変遷し、株主至上主義の米国がSDGs、ESG等の社会課題解決や多様なステークホルダーに目を向けるようになり、日本はコーポレートガバナンス・コードの導入等で以前より株主利益に配慮をするようになった。両国のガバナンスを経験し、その優劣ではなく、各企業が「社外の目」を通して、「社内の常識、外の非常識」を防ぎ、常に自社を客観的に評価し、「良いとこ取り」をしつつ、企業価値向上に最適なガバナンスを構築することが重要だと考えてきた。

しかしながら、現在でも違いが顕著なのは、CEO選任プロセスである。内部昇格が慣例の日本と、CEOの人財市場が存在し、外部登用が頻繁な米国では、その違いは当然だが、人財コンサルタントとして「そのポジションのミッションに最適の人財を、内外を問わずに登用する"適所適財"」を提唱してきた人間としては、どちらにも課題があると感じている。米国では社外取締役主体の指名委員会が候補者を選任し、社外主体の取締役会が株主総会に推薦するが、たとえそのCEOが失敗しても委員会が「選任責任」をとることはまれであり、CEOの入れ替えを繰り返す。日本では、まだ外部人財の登用には積極的ではなく、指名委員会の役割も模索中で「適所適財」の選任ではない場合もある。

同時に、「適財」の「CEO」像も変化した。中国等アジア諸国が台頭するまでは、「グローバルCEO」は欧米モデルだったが、現在はどこでも成果の出せる「ハイブリッドCEO」である。長年「危機管理も含めて多様性対応・活用能力のあるプロフェッショナルCEOが必要」と提唱してきたが、激変する世界経済環境の現在では、以前にも増してそうしたCEOが求められている。日本企業も指名委員会の設置だけでなく、その委員会が「適財」を選定し、その「選任責任」を果たせるように機能の充実を図る時期がきている。

G&S Global Advisors Inc.
代表取締役社長
橘・フクシマ・咲江